最近話題の「高張力鋼板(ハイテン)」とは?

最終更新日時: 2024/04/10 16:01

近年、日本製鉄のUSスチール買収や自動車産業を中心に、「高張力鋼板(ハイテ ン)」という言葉が注目を集めています。この記事では、高張力鋼板の特徴や利 点、用途、加工方法などについて詳しく解説します。

高張力鋼板(ハイテン)

高張力鋼板とは?

高張力鋼板は、一般的な軟鋼板と比べて、高い引張強度を持つ鋼板のことを指し ます。引張強度が340MPa以上の鋼板が高張力鋼板と呼ばれ、その強度によって、340MPa級、590MPa級、980MPa級などに分類されます。 高張力鋼板は、特殊な合金元素の添加や熱処理によって、高い強度と優れた成形 性を実現しています。代表的な高張力鋼板として、デュアルフェーズ鋼(DP鋼) 、変態誘起塑性鋼(TRIP鋼)、ツイニング誘起塑性鋼(TWIP鋼)などがあります 。

高張力鋼板の利点

高張力鋼板は、以下のような利点を持っています。

  • 軽量化:高い強度を活かして、板厚を減らすことができるため、部品の軽量化 が可能です。
  • 衝突安全性の向上:高い強度により、衝突時のエネルギー吸収性能が向上し、 乗員の安全性が高まります。
  • デザインの自由度向上:優れた成形性により、複雑な形状の部品も製造できる ため、デザインの自由度が広がります。

高張力鋼板の用途

高張力鋼板は、主に自動車産業で用いられています。自動車の軽量化と衝突安全 性の向上が求められる中、高張力鋼板は車体骨格部品や衝撃吸収部品に広く採用 されています。具体的には、ピラー、ルーフレール、ドアビーム、バンパーリイ ンフォースメントなどに使用されます。

自動車以外にも、建設機械、農業機械、鉄道車両など、軽量化と高強度化が求め られる分野で高張力鋼板が活用されています。

高張力鋼板の加工方法

高張力鋼板は、一般的な軟鋼板と比べて、加工が難しいという特徴があります。 高張力鋼板の加工には、以下のような点に注意が必要です。

  • プレス加工:高い強度ゆえに、プレス加工時に大きな荷重がかかります。適切 な金型設計と強力なプレス機が必要です。
  • 曲げ加工:スプリングバックが大きいため、overbendingが必要になります。また、最小曲げ半径にも注意が必要です。
  • 溶接:高張力鋼板は、溶接性が低い傾向にあります。適切な溶接条件の設定と 、溶接部の強度確保が重要です。
  • 熱処理:熱処理条件によっては、強度や成形性が変化することがあります。適 切な熱処理条件の設定が必要です。

高張力鋼板の加工では、材料特性を理解し、適切な加工条件を設定することが重 要です。また、加工現場と設計部門との連携を密にし、製品設計と加工方法の最 適化を図ることが求められます。

今後の展望

高張力鋼板は、今後さらに高強度化と利用拡大が進むと予想されます。1180MPa級や1470MPa級の超高強度鋼板の開発も進められており、自動車の軽量化と衝突安全性の向上に貢献することが期待されています。また、IoTやAIを活用した加工技術の高度化も進むと考えられます。加工条件の最適化や不具合の予知、品質管理の 自動化などが実現することで、高張力鋼板の加工がより効率的になることが期待 されます。

まとめ

高張力鋼板は、高い強度と優れた成形性を持つ鋼板であり、自動車産業を中心に 広く利用されています。軽量化と衝突安全性の向上という利点を持つ一方、加工 の難しさにも注意が必要です。 高張力鋼板の利用拡大と技術進歩により、自動車をはじめとする様々な製品の軽 量化と高強度化が進むことが期待されます。材料特性を理解し、適切な加工方法 を選択することが、高張力鋼板を活用する上で重要となります。 高張力鋼板は、軽量化と高強度化という時代の要請に応える材料であり、今後さ らなる発展が期待される分野です。

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