曲げ加工のスプリングバックとは何か?

最終更新日時: 2024/04/10 16:01

板金加工において、曲げ加工は重要な工程の一つです。しかし、曲げ加工を行う 際、スプリングバックと呼ばれる現象が発生し、目的の形状や角度を得ることが 難しくなることがあります。この記事では、スプリングバックの基礎知識と対策 について詳しく解説します。

スプリングバックとは?

スプリングバックとは、材料を曲げ加工した後、加工力が解放されることによっ て材料が元の形状に戻ろうとする現象を指します。曲げ加工後の材料は、目的の 角度よりも開いた状態になります。

スプリングバックが発生する主な原因は、材料の弾性回復です。曲げ加工では、 材料に塑性変形を与えますが、同時に弾性変形も発生します。加工力が解放され ると、弾性変形の部分が元に戻ろうとするため、スプリングバックが起こるので す。

スプリングバックの影響因子

スプリングバックの大きさは、以下のような因子によって影響を受けます。

  • 材料の特性:材料の弾性率、降伏強度、加工硬化特性などが影響します。弾性 率が高く、降伏強度が低い材料ほど、スプリングバックが大きくなる傾向があり ます。
  • 板厚:板厚が薄いほど、スプリングバックが大きくなります。これは、薄い材 料ほど曲げ部の塑性変形領域が小さく、弾性変形の割合が大きくなるためです。
  • 曲げ角度:曲げ角度が大きいほど、スプリングバックも大きくなります。90°以上の曲げ加工では、スプリングバックの影響が顕著になります。
  • 曲げ半径:曲げ半径が小さいほど、スプリングバックが大きくなります。これ は、曲げ半径が小さいほど、材料に加わる応力が大きくなるためです。
  • 金型の形状:金型の形状や寸法、クリアランスなどが、スプリングバックに影 響を与えます。適切な金型設計が重要です。

これらの因子を考慮して、スプリングバックを予測し、適切な対策を講じること が必要です。

スプリングバックの対策

スプリングバックを抑制し、目的の形状や角度を得るためには、以下のような対 策が有効です。

  • オーバーベンディング:スプリングバックを見越して、目的の角度よりも深く 曲げる方法です。材料や曲げ条件に応じて、適切なオーバーベンディング量を設 定します。
  • 金型の工夫:金型の形状や寸法を工夫することで、スプリングバックを抑制で きます。例えば、曲げ半径を大きくしたり、クリアランスを調整したりすること が有効です。
  • 材料の選定:スプリングバックが小さい材料を選択することも一つの対策です 。弾性率が低く、降伏強度が高い材料は、スプリングバックが発生しにくい傾向 があります。
  • 熱処理:曲げ加工後に熱処理を行うことで、材料の弾性回復力を低減できます 。ただし、熱処理による材料特性の変化に注意が必要です。
  • 複数回の曲げ加工:スプリングバックを段階的に修正するために、複数回の曲 げ加工を行う方法もあります。ただし、加工効率や材料の疲労の観点から、慎重 な検討が必要です。

これらの対策を適切に組み合わせることで、スプリングバックの影響を最小限に 抑え、高精度な曲げ加工を実現することができます。

スプリングバックの予測と補正

スプリングバックを効果的に制御するためには、事前にスプリングバック量を予 測し、適切な補正を行うことが重要です。

スプリングバックの予測には、経験則に基づく方法と、シミュレーションを活用 する方法があります。経験則に基づく方法では、過去の加工実績からスプリング バック量を推定します。一方、シミュレーションを活用する方法では、有限要素 解析などの数値解析手法を用いて、スプリングバック量を予測します。

予測されたスプリングバック量を基に、金型の設計や加工条件の調整を行います 。この際、試作品の評価や測定結果のフィードバックを通じて、予測精度の向上 と補正値の最適化を図ることが重要です。

まとめ

曲げ加工におけるスプリングバックは、材料の弾性回復に起因する現象であり、 目的の形状や角度を得るための障害となります。スプリングバックの大きさは、 材料特性、板厚、曲げ角度、曲げ半径、金型形状などの因子によって影響を受け ます。

スプリングバックを抑制するためには、オーバーベンディング、金型の工夫、材 料の選定、熱処理、複数回の曲げ加工などの対策が有効です。また、スプリング バックを事前に予測し、適切な補正を行うことが重要です。

スプリングバックの制御は、曲げ加工の高精度化と効率化に不可欠な要素です。 材料特性や加工条件に関する知識を深め、適切な対策と予測・補正手法を活用す ることで、高品質な曲げ加工を実現することができます。

曲げ加工のプロフェッショナルとして、スプリングバックの基礎知識を身につけ 、その制御技術を磨いていくことが、板金加工の品質と生産性の向上につながる でしょう。

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